Sayo Film

2月 4, 2022

ジェレミー・ルビエ監督による映画『Sayo』は心の旅の話だ。パリ出身の日系フランス人、ナギサ・ショヴォーが演じる主人公ナギサは双子の姉妹を2年前に失った。その数ヶ月後からナギサは地元の寺に通うようになり、そこで見知らぬタクシーの運転手に出会う。彼は、亡くなった家族の魂に出会える旅へとナギサを連れ出す。本作は美しい日本の自然の描写や繊細な語りで見る人を感情的にさせる神秘的なロードムービーで、少女の心から大人として気づかされる儚くも志の強い心の旅を描いた実話に基づく物語だ。

『Sayo』は2020年に公開され、モンタナ国際映画祭、FANTBOI映画祭、ファンタジア国際映画祭、シネファンタジー映画祭など数々の映画祭で称賛を受けた。撮影の舞台となった佐渡島のシーンは特に印象的で、その風景描写は傑作だ。それと同等に、Synが携わったサウンド・ワークにも注目してほしい。この作品の音楽制作にはSynのアラン・モーツリーが携わっており、ニック・ウッド(Syn/CEO)と田辺裕美子(Syn/COO)が彼を起用した。作曲家ルシ・ホランドの繊細な音作りによって生まれたサウンドトラックはとても美しい。映画『Sayo』は、視覚と聴覚で感じる作品なのだ。

どのようにしてこの映画の音楽が作られたのか—。この映画がタクシーで移動するロードムービーであり、その多くが車中での心の奥に秘める対話であることに焦点を置いた。たとえ沈静な映画であっても音や言葉は存在し、重要視される。(ADRについて書かれた過去のブログ参照:この作品に対するモーツリーの挑戦は、対話を大事にすることと、バックグラウンドの騒音を減らすこと。“車内は映画の撮影をするのに最も難しい現場の一つ。車から出る音や交通の騒音がどうしても主張してしまう。この映画の主は対話であり、それに聞き入ってもらうことが重要だ。だから僕にとっての最大の挑戦は、対話を大切にすることだったんだ。”この映画のカギは対話であることは、この映画を観た人であれば誰もが納得するだろう。それは、『Sayo』がブラジルで開催された映画祭「シネファンタジー」でベスト・スクリーンプレイ賞を受賞したことが証明している。

一方、音風景もこの物語の世界観を創り上げている。森林の音、波打つ音、足音…日本を象徴する神社や寺のシーンで聴こえてくるこれらの音は特に、心に突き刺さるものがある。ドローン(持続音)や神秘に包まれた音質と、この作品にインパクトをもたらす神秘的なセンスが添えられた雰囲気は、現実と別世界の狭間が絶妙に観る人の気持ちを引き寄せるものがある。モーツリーはこう語る。“フォーリー(撮影時に録音された音と置き換えるために別で録音した効果音)とバックグラウンドの音を足したんだ。ジェレミー自身も良い耳を持っているからすでに彼自身で音をデザインしているけれど、僕はそれに、なくても気づかれないような緻密な音を—風と足音を多く付け足したんだ。僕にとって、映画の中の良い音というものは気付かれないものだと思ってる。なぜなら映画は物語に没頭するものだから。映画の中の音は、良くない時にだけ気付かれるものなんだ。”幻想的な映画では不自然な音は過負荷なものになり得る。ファンタジア国際映画祭では“この作品は全てにおける自然描写が素晴らしい神秘の旅”と評価された。ここで言う“自然”とは、音についても指している。たとえその音が登場人物と直接の関係性を持たなくても、この映画では音を通じて“自然”を感じることができる。

ジェレミー・ルビエ監督とSynの出会いは2020年。田辺裕美子(Syn/COO)がプロデューサーを務めた映画『彼女は夢で踊る(Dancing In her Dreams)』がきっかけだった「マドリード国際映画祭2020」で審査員賞を受賞したこの映画の舞台は広島に実在する伝説のストリップ劇場。劇場を経営する社長と当時のストリッパーたちの実話に基づいた物語だ。ジェレミーがこの作品で撮影監督を務めていたことからSynとの共同の取り組みが始まり、『Sayo』で赤工隆(Syn/チーフ・エンジニア)がサウンドミックスを手掛けるまでに至った。

”たった61分間にこの作品をおさめられるなんて驚きだ” 『Sayo』を観た人からこんなコメントが寄せられた。この成果は、素晴らしいディレクションに力強い対話、美しい描写、そして、Synと作曲家のルシ・ホランドによる絶妙な音作りによるものだと思う。初めてこの映画を観た時、ある感覚に陥った。まるで森林と海岸の香りがしてくるような―。それが、Synがこの映画に捧げたサウンド・ワークだ。